リハウスリハウスしてはじめての出勤だなあ。 「いってくるね。」 こうして、日常がここからはじまっていくんだね。うん、うちの奥さんも満足げに窓から手をふってくれてるよ。 てふってやるか。 でも、これからローン30年。ま、売却益あったから、月の返済 額はあんまし変わんないんだけどね。 定期、ていきと。 ふーん、まえのとこよりはすいてるな。 「えっ?」 あそこで電車を待ってるの、S江じゃないか?そうだよ、そうだよ。中学校までいっしょで、たしか、お父さんの転勤で東京に越した、そう、S江だよ。 そうか、S江も、この街に住んでんだ。 でも、そうだよな。右の首筋に小さいほくろがあってさ。たしかに、S江だよ。まちがいないよ。 あいつ、なにやってのかなあ。ヘラルド朝日を読んでるぞ。なんか、ばりばりのキャリアウーマンってかんじか。 電車がきた。 うわー、なんでこんなに込んでんだ。押すなって、押すなって、降りる人がいるだろうに。 おーい、そこのおばさん、降りる人がいるんだからさ。 うわっ、つり革もつかめねえの。不動産屋の話だと、楽々通勤だっていってたけど、楽なのは時間短縮だけだな。 おっとあぶねえ。 あ、すみません。となりのサラリーマンにあたっちまったよ。 そういえばS江はどうした? あっ、あそこでつり革もって、英字新聞よんでる。 なんか、おれ、S江にあこがれてたんだよね。美人でさ、勉強もできて、スポーツもできる。 どうしようかな、せっかく、いい奥さんがいて、リハウスのCMにでてもおかしくないくらい可愛い娘がいるのに、不倫かよ。 ふ り ん いけない、いけない。S江だって、S江の日常があるんだ。 S江が降りるぞ。そうかこの街に、 えっ、金髪の男が手を振ってるぞ。なんだ、なんだ、ホームで朝っぱらからキスをしてるぞ。 なんちゅう、女だよ。 そういえば、ここはどこだ? 「・・・・」 しまったよ、S江にみとれて、反対の電車に乗ったらしい。 この時間だと、遅刻だよ。トホホ。 |